
市場ではau版のiPhone4S在庫に余裕が出てきている様であり、また、ソフトバンク版も相当数のユーザーへ届いている中、発売日前にソフトバンクオンラインにて予約をした筈の僕の処へは「在庫とうぶん入んねッス。乙wwwwwwぷw」的なメールが来たっきり、壮絶な放置プレイ作戦が展開中。 もはや、現実にはiPhone4Sなどというものは発売されおらず、これは夢だったんだという妄想が確信に変わりそうなTeamDyquemで御座います。みなさまこんにちは。
最近はアレですよ。 今月は二本のアプリリリースをさせて頂き、また本業も山場を迎えている等色々と忙しい毎日ではありますが、相変わらず隙間を縫う様に細々と生き、秋刀魚を頂きながら晩酌と制作に励んでおりますよ。
僕のiPhone4Sはまだ、やって来ません。
巷においてはauというキャリア展開を迎えたiPhoneに対し様々な想いが在る事でしょう。市場が増え競争が促されるという意味において基本的にはユーザーにとってのデメリットは無く、歓迎ムードであると言って良いでしょう。他国においても、iPhone一国一キャリア独占供給体制は徐々に解除されつつある様ですしね。
僕のiPhone4Sはまだ、やって来ません。
 Docomo版iPhone
さて、ところで。 「Docomo版iPhone」というものはどうなるのでしょう。
世間一般に言われている情報に基づき大まかにざっくりとまとめるならば、利権がらみで折り合いが付かないとされている現在のDocomoとApple。これにより、Docomo版iPhoneはまず考えられない状態であるというのが通説でありますが、これはどういった事でしょうか。
本日は、自分の別媒体記事より、ネタの主軸残しで再校正した話題をひとつ。
 ドコモマーケットとAppStore
言わずもがな、AppleにおけるiPhoneビジネスの大きな軸となるAppStore。年間市場規模はなんと24億ドル。24億ドルって何ドルだよ!?の世界でありますね。円換算はナンセンスかもしれませんが、敢えて行うならば現為替レートで1800億円超です。この内30%もAppleが抜いていくわけですからね、なんとも恐ろしい収益率であります。 (※参考文献:WIRED ARCHIVES)
さて、昨今はことさらAppStoreの規模が取り沙汰される様に感じますが、Docomoにも強大な市場「ドコモマーケット」が存在しています。所謂iモード系ですね。 こちらはなんと更に凄まじい事になっており、国内だけで年間3000億円規模の市場です。「国内だけで」です。幾ら元が国営企業出発だとは言えこの規模は笑えないというか笑うしかなく、この内9%をドコモが抜いています。ある一企業が国内電話インフラからこれだけのお金を抜いているんですから、日本の携帯電話利用料金が安くならないわけであります。また、毎日、ドコモ携帯電話ユーザーの内約2600万人が訪れるというポータルサイト「iメニュー」の存在も大きく、ある種、これはメディアであるとすら言えるでしょう。 (※参考文献:古いですが2010/12/07 日本産業新聞)
 マーケット共存の不可能性
さて、展開キャリアに対し料金面等で厳しいノルマを課す事で有名なApple。国内においてもソフトバンクやauはかなり無理をしていると思います。体力のあるDocomoならばこの点をクリアする事は容易い事でありましょうが、問題はドコモマーケットです。 あのAppleが、Docomo版のiPhoneにだけ特別にiモードアクセス機能を設ける筈も、またその必要も無く、DocomoがiPhone用にiモードコンテンツ実行アプリを準備する事を検討するにせよ、それはエミュレーターの類を一切許可しないAppleの審査基準に合致せず、結果iPhoneとドコモマーケットは水と油そのものであると言えるでしょう。
そしてまた、ドコモマーケットを搭載しない端末をDocomoが出す意味は薄く、これほどの強大な利権を危うくさせる危険性すら伴う決断に最早なんの意味も無いのでしょう。 Docomoとは、Appleとは違い何処まで行っても結局は「電話屋」ですからね。世界展開を見据えているとは言え国内基盤防衛は最優先事項でありましょう。
先日、「NTTドコモ:山田社長、iPhone販売可能性否定せず 」といった見出しの小さなニュースが散見されました。
NTTドコモの山田隆持社長は18日、米アップルのiPhone販売の可能性について「Android主軸でやっていくが、その上でラインアップの一つとしてiPhoneを出すのもやぶさかでない」 と否定しなかった。米アップルと交渉しているかについては「言えない」とした。
これは文字通り「吝かではない」だけであり、吝か処か、血で血を洗う利権争いが勃発するかもしれないというこの事態に、「米アップルと交渉しているか?」「言えない」。それはもう、何も言えるわけなどありはしないのです。
Docomoにしてみれば、それまでのDocomo携帯電話ユーザーがDocomo版iPhoneに機種変しただけで、そのユーザーの持つビジネスの一つが終焉する事を意味します。これが恐らく数万数十万ユーザー規模でいきなり展開され、更に裾野が広がっていく危険性を秘めていますからね。「d モード」等のドコモマーケット導線を確保出来たAndroidで展開していく以外に道は無いのでしょう。
 パワーマーケット
Docomoにしても、そしてAppleにしても共通して言える大きな事は、双方共にほぼ完璧で天下御免の独占市場を築き上げたという点でしょう。
どうやって各国の独禁法めいた物達を黙らせているのかは知るところでは在りませんが、現実に、もはや世界に競争相手等殆ど居なくなってしまう日が近づいているのかもしれません。
まずはキャリアなりデバイスなりを築き、それを通しその仕組みを利用しなければ触れる事の出来ないサービスを築き、これを無尽蔵に流通させる事により元となるキャリアやデバイス市場を堅め、やがてサービスそのものが自動的に富を産み出し続けるという仕組み。今更法のメスが入ったとしても既に民意が味方に付いています。勝ちゲームというわけですね。この意味では正直者であったと言っても良いであろうマイクロソフトが、いまや可哀想になってきますね。
僕は、本業の傍ら個人的に経済の勉強等を頑張ってみてはいるという事もありますが、この様に、合法的にインフラから金を大量に抜いていくスキーム。そして、それを強固に維持運営していくロジック。
本当に関心します。 皮肉でも何でも無く、本当に興味が尽きません。

さて、動向の気になる二社でありますが、 個人規模ながら現実に双方のマーケットにて開発を経験し、感じた事。
ハード屋でありながら実は非常に優れたソフト屋でもあるAppleと、 ハード屋でもソフト屋でもないDocomo。
こうしたネタも、近く展開してみたいと思います。
TeamDyquemでした。

シリーズ記事まとめ
■Aニュース、ガジェット通信 寄稿記事
「『連載.jp』寄稿「ゲームプログラマが語る「プロ棋士に勝ったAIは、タクシー基本無料化をもたらす?」」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る ”買わない理由”がもたらす充足感と、開発者達の心理」」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る アップデート版に潜む開発者モラルハザード」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る ソフトやアプリと携帯ゲーム課金における経済行動学」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る。新しいゲーム機が定期的に生まれる理由」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る 楽しさの仕組み ゲームメカニクス」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る 3Dテレビとゲームの微妙な関係 その打開策」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「ゲームプログラマが語る 無料アプリのビジネスモデルと舞台裏」」
「『Aニュース/ガジェット通信』寄稿「新発表ラッシュに見るクラウド大航海時代の幕開け」」
■ゲーム制作初心者さん向け系
ゲームプログラマが語る。なんちゃってリードプログラマにはなるな!ゲーム造りで放棄してはいけない大切な事
ゲームプログラマが語る。今さら聞けないフレームレートに纏わる話。秒間60?16ミリ?
ゲームプログラマが語る。「浮動小数点」と商業レベルで上手に付き合う方法
「ゲームプログラマが語る。ゲーム制作初心者の方へ小ネタ「クォータービュー入門」」
「ゲームプログラマが語る。「正しい乱数」が彩る確率世界とエンターテイメント」
「iPhoneアプリ、ゲーム制作初心者の方へ小ネタ「線分と円の交差」」
「iPhoneアプリ作者より、ゲーム制作初心者の方へ小ネタ「2Dベクトル」」
「iPhoneアプリ作者より、ゲーム制作初心者の方へ小ネタを一つ」
■「プロのゲームプログラマとして、ゲーム製作に関する書評を」シリーズ
ゲームプログラマが語る書評:「MMORPGゲームサーバープログラミング」を読んでみた
ゲームプログラマが語る書評:「ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術」を読んでみた
ゲームプログラマが語る書評:「ゲームエンジン・アーキテクチャ」を読んでみた
■個人でも出来る、マルチプラットフォーム開発関連
「ゲームプログラマが語る。iOSゲームをWinマルチプラットフォーム開発・その4」
「ゲームプログラマが語る。iOSゲームをWinマルチプラットフォーム開発・その3」
「iPhoneアプリ作者が語る。マルチプラットフォーム化その2・アトミック型定義のススメ」
「ゲームプログラマが語る。iOSゲームをWinマルチプラットフォーム開発・その1」
■リリースしました系
「PASTEL-ORBIT/TeamDyquemアプリ第19弾。ローグライク決定版「隣人は魔王」をリリースしました。」
「TeamDyquemアプリ第18段。ご当地バトルRTS「埼玉クエスト」をリリースしました。近隣の県を滅ぼそう(*-_-*) 埼玉以外でも遊べます #47app」
「アプリ新作「ネコりす マカロン」をリリースしました」
「埼玉県ご当地アプリ、「タッチ the さいたま」をリリースしました #47app」
「アプリ新作「ひよこガーデン」をリリースしました」
「TeamDyquem新作。結構真面目なアクションパズル「ネコりす」リリース」
「iPhoneアプリ作者が、iアプリ「泡リス女子部 for iアプリ」をリリースしました」
「自作iPhoneアプリ改良版、「ネコがゴミのようだネ:アーケード」をリリースしました」
「iPhoneアプリ作者が、「まりも育成」for iモードをリリースしました」
「iPhoneアプリ新作 「ナタ・デ・ネコ」 をリリースしました」
「秋刀魚は関係ないけれど、新作「i-Wishbone」リリース」
「アプリ新作「ネコがゴミのようだ」。プロモ動画をアップしてみた」
「「泡リス 女子部」、販売開始」
「AppBankにまりも紹介記事が!」
「ゲームプログラマとして参加。ご当地47都道府県アプリプロジェクト #47app」
□ビジネス系
「ゲームプログラマが語るドコモiPhoneと、インフラから合法的に大金を抜くスキーム」
「ゲームプログラマが語る。秀丸エディタのビジネスモデル」
■SFネタ系
「ゲームプログラマがSFを語る。意識はどこからやってきて、死んで、そして何処へ行く?」
「ゲームプログラマが語る。気の遠くなるスキもない程の、宇宙の話」
「iPhoneアプリ作者が語る。流れ星に馳せる真実」
「iPhoneアプリ作者が警笛。どこでもドアの使い過ぎには注意」
「iPhoneアプリ作者が語るSETI理論。異星人さんは何処!?」
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