
奇妙な梅雨が明けたが早いか、暗雲は立ちこめるは、猛暑酷暑が順繰りに襲ってくるは、バリューセットが如しお手軽終末感に彩られる関東平野。 カラっとした晴れ間なんてものは久しく見ておらず、まるで、自分が豚マンになったかの様な気候が続いておりますが、今日も今日とてTeamDyquemで御座います。皆様、こんにちは。

さて、昨今はまさに久しぶりのコンシューマ新型機ラッシュ。 各社より現代コンソール機の発表が出揃った中、新しいゲーム時代の到来を心待ちにされているユーザーも多い事でしょう。 かく言う僕も、作り手側ではあるとはいえ、大変待ち遠しい日々で御座います。
据え置きはPS4、XBOX ONE、WiiU。携帯はVITAに3DS。 スーファミ一強時代がなんとも遠い昔の様な――事実、遠い昔なのですが――そんなアンソロジーでカタストロフィーで想い出のエントロピー的な懐かしさを覚えるというものではありませんか。
いずれも良いハードウェアですし、個性的な面々ではあるのですけれども。ここは一つクリエイター視点を持ちまして。 任天堂陣営ハードウェア上での開発において、苦戦を強いられる事必至と言える大きな爆弾に触れてみたいと思います。
 WiiUと3DSの弱点
任天堂系ハードウェアが性能的に一歩遅れをとっているという話題につきましては、ネット上での賑わいの通り、ある意味でそれは事実であります。 何をもって「性能」と表現するのかは評価の分かれる所ではありますが、単にFLOPS的な視点からも、そもそも描画性能やメモリといった単純な評価基準でさえも、その性能不足は明らかであり、この点、もはや議論の余地もありません。
マシンパワーのみがゲームの面白さや本質を決定する要素だなんて事は、決して在りはしませんが、性能はお金と同じ。無いよりは、在った方が良いのです。 この点において、その圧倒的な描画能力差や表現の多彩さが、任天堂機とそれ意外の現世代機間へ、一定量の購買意欲差をもたらしている事は確かでしょう。
しかし、任天堂機には、他に無い個性的なデバイスが備わっています。
3DSにおける多画面+裸眼立体視。 WiiUにおけるお手元画面、ゲームパッド。
こうしたアイディアの追求こそが任天堂の戦い方であり、任天堂における勝利の方程式でもあります。彼等は、そこへ性能を詰め込む代わりに、常に新しい遊びを搭載し続けて参りました。
しかし、また。 これこそが、任天堂ハードウェアにおける最大のネックでもあるのです。
 処理能力の使い方
本体性能そのものは他社のハードに大きく劣るWiiUに3DSでありますが、この点を補う遊びとして、裸眼立体視や複数画面を搭載している点は、大変良いアイディアであると言えるでしょう。 僕如し一開発者に言われるまでもなく、それは確かに素晴らしいアイディアであり、それを生かしたゲームが量産された暁には、ゲーム機の本質すらをも覆しかねない、まさに任天堂大勝利時代となる筈でした。
しかし、そんな時代は、そう簡単にはやってきません。
開発者側からの視点からすると、多画面という事はつまり――極論すれば――、一つのゲーム機における処理能力で、二台分の画面を作らなければならないという事です。 ほんとに極論ですが
裸眼立体視も同様。あれは、左目+右目用にそれぞれ別々の画面を生成し、特殊な装置でそれを両目へ独立伝達させるという仕組みであり、やはりここで二台分の画面を作っている事になります。(3DSは、下画面を入れれば合計三画面を生成している事になりますね)
限られたマシン性能を注力すべきデバイスが、分散しているのです。
一つの画面へ、心血を注いだ最高の絵作りを行う。 これが一般ゲーム機の通例でありますから、単純に画面を比較されれば任天堂機に勝ち目等在りはしないのです。 その上更に、元の性能がそもそも劣っているのですから、その描画能力の差はまさに、桁違いの距離となって表れてしまうのもやむを得ない所です。
任天堂機特有のデバイスに遊びを傾ければ、表現力は桁違いに落ちてしまう。 かといって、裸眼立体視やゲームパッドを無視して一画面に特化した絵造りをしたところで、元の性能差が足枷となり、結局PS4らに太刀打ち出きるレベルには達しません。
結局、ゲーム本来の面白さで勝負するという至極当然である原点へ立ち返るわけで在りますが、その実現の為には必ず求められる条件「開発メーカーの多さ」というハードルを、任天堂は自ら上げています。
その姿はさながら……。

もともと戦闘力の大きく劣っている天津飯が、「四身の拳」を使って悟空に挑んでいる様なものでありましょう。一人の力を大きく分散してしている為に、能力が半減していしまっているのです。3DSも、WiiUも。


とは言え、なんだかんだ言ってもゲームはやはりその内容。 これから一体どんな面白いゲームが表れるのか、それを「性能」だけで語る事はナンセンスでありましょう。 本エントリーはまあ、各ハードウェアを彩る――あくまでも――、一つの側面です。
各陣営満を持した次世代機出そろった今、群雄割拠の結末に高揚感を禁じ得ませんが、PS4vsXBOX ONE、二代巨頭の対決は、間も無くです。

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